婦人科内視鏡手術について

婦人科疾患の治療でよく使われる内視鏡には、子宮鏡と腹腔鏡があります。


1.子宮鏡下手術

子宮鏡は腟から電気ループやレーザーメスがついた小さなカメラを子宮の中に差し入れて、 粘膜下筋腫やポリープを切除するのに使われます。 お腹にメスを入れず、部分麻酔で済むという意味では、手術の中で一番からだへの負担が少なく、回復も早い術式だと言えます。 但し、子宮鏡は子宮の内側に病巣がある場合にのみ有効で、筋層内筋腫や漿膜下筋腫、 腹腔内や卵巣の内膜症病変などの治療には使えません。 また、大きさによっては、粘膜下筋腫であっても子宮鏡で核出するのが難しいこともあります。


2.腹腔鏡下手術

腹腔鏡というのは、おへその周辺に3~4箇所の小さな穴を開けて、カメラやメス、鉗子を差し入れて、 お腹を開くことなく手術を行なうための道具です。 婦人科では卵巣嚢腫の核出術や、卵巣の摘出、内膜症の癒着剥離や病巣焼灼に使われることが多いようです。 筋腫の核出術にも使えますが、筋腫の数、大きさ、できている位置によっては、適応にならないこともあります。 筋腫が大きい場合、小さな穴から出すために、お腹の中で細かく砕かなければなりませんし、 筋腫を取った後の子宮の傷を縫い合わせるときも、モニターを見ながら遠隔操作で行ないますので、 開腹手術に比べかなり時間がかかります。
腹腔鏡下手術は全身麻酔下で行われますので、時間が長くなるとそれだけからだへの負担やリスクも大きくなります。 時間を短縮するために、お腹に開けた穴の1つを少し広めに切り拡げ、そこから筋腫を引っ張り出したり、 直接目で見ながら縫合したりする、LAM(laparoscopically-assisted myomectomy 腹腔鏡併用核出術) という術式もあります。通常の開腹術より傷口は小さく、癒着などのリスクは少なくなると言われています。
子宮全摘にも腹腔鏡を使うことができますが、筋腫の場合と同じで小さな穴から子宮を取り出すのは大変ですから、 腹腔鏡は癒着をはがしたり、靭帯などを切り離したりするのに使い、子宮そのものは腟から取り出す、 LAVH(laparoscopically-assisted vaginal hysterectomy=腹腔鏡併用腟式全摘術)という方法が一般的です。
治療の効果という意味で開腹手術と比較すると、確かに開腹の方が腹腔内を直接目で見、手で触ることができますから、 小さな筋腫の芽ももらさず取り、また取った傷痕をより丁寧に縫合することができます。 しかし、術後の癒着のリスクは、腹腔鏡下手術のほうが、外気やガーゼなどに触れることの多い開腹手術に比べて少ないはずで、 一長一短です。
婦人科で内視鏡手術が普及し始めてまだ10年足らずですから、術者の腕にもかなりの違いがあります。 過去に開腹手術をしていたり、内膜症が進行していたりして、腹腔内の癒着が激しい場合は腹腔鏡では手術できない、 といわれることがよくありますが、これは術者の腕によるようです。筋腫の大きさや位置についても同様で、 1つの病院で腹腔鏡はムリ、といわれても、他の病院ではOKということもありますので、なるべく症例数が多く、 内視鏡手術に慣れた医師がいる病院を選ぶことをお勧めします。

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